死して屍拾う者無し

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映画評/「夢十夜」

毎年帰省の際には邦画DVDを買うんだけど
ニッポンって異常にDVDが高いから
マックス3本しか買えない。
だから厳選に厳選を重ねるんだけど。
だって一本5千円近くするからねー。

今回は以前から見たかったこの「夢十夜」を選んだ。
夏目漱石の原作を元に10人の監督がそれぞれの
解釈で映画を撮っていて、かなり面白かった。
アタイは事前に原作を読んでなかったんだけど
不思議な雰囲気の映像を見て面白いなあと思って
さきほど青空文庫のサイトで急いで原作も読んでみた。
原作自体が何だか荒唐無稽な感じなので
映像を作る人たちもかなり好き勝手な解釈が許されたんだろうなと。
でも自由な分、監督の世界観が出るから難しいかったのかも。
際立った解釈で際立った映像を作り上げている監督が
すごく良く分かるので原作を読むとさらに面白くなった。
小説と映像で二度楽しめる映画だなあと思う。笑

10本もあるので手短に感想を書きます。笑


「夢十夜」
原作:夏目漱石
公開:2007年


第一夜
監督;実相寺昭雄 脚本:久世光彦
出演:小泉今日子 松尾スズキ 寺田農

大筋は原作に沿っているものの、
第一夜の素晴らしさはその映像美にあると思う。
小泉さんの明治時代のけだるいミステリアスな女性像が
非常に効果的でインパクトがある。
窓から見える観覧車も、金魚も洗濯物も
すべてがアクセントになっている。
そして時計がこれまた効果的。
不思議な原作に負けない映像になってる。
どうでもいいけど松尾スズキさんて役者だと、
暗いキャラが多い気が・・・。笑


第二夜
監督:市川崑 脚本:柳谷治
出演:うじきつよし 中村梅之助

ほとんど原作に忠実だけど
無音でモノクロにしてあるところが市川崑流なんだろうなと。
最後のオチは原作には無かったので市川監督の
解釈だろうなと思う。
お寺の外観を撮った構図が大変美しい。
個人的には和尚役の中村梅之助さんがとても
とても良い感じでこの役をされてることが嬉しかった。
市川監督じゃないと出演されなかったと思うし。


第三夜
監督:清水崇
出演:堀部圭亮 香椎由宇

ちょっとしたホラー映画。
でもそこまで怖くは無くて夏目漱石の
神経が細かそうだなあとか、
ちょっとしたことでくよくよしそうだなあと言うのが
良く伝わってくる出来になってる。
目が潰れた坊やのメイクにリアリティが無いのは
多分わざとかなあと。
それ以外がリアルなので。笑
香椎さんって本当にキレイな顔をしてるなあと思った。
明治の女性の髪形が本当に良く似合ってて
見惚れてしまったもん。
さすが数百万に一人と言われる左右対称顔なだけあるね。
久しぶりに見たけど演技も良かった。
堀部氏が意外と良くて驚いた。
とにかく第三夜は原作に忠実に描いていて
でも原作を凌駕する映像を実現してて
かなり良い出来なんでは?とアタイは思った。


第四夜
監督:清水厚 脚本:猪爪慎一
出演:山本耕史 品川徹

原作はまるでハーメルンの笛吹きオトコを
連想させるような本当に短い話なんだけど
その中核にさらなるストーリーを組み込んでいて
大変ミステリアスな出来栄えになってる。
昔の田舎の景色がこれまたレトロで
懐かしい雰囲気を漂わしていて
ここまで実現してるのも凄いなあと思っちゃう。
けど漱石役は別に山本耕史さんじゃなくても
良かったんじゃ・・・って気がしないでもない。
でもアタイは山本さんのファンなので
よいと言えば良いんだけど。


第五夜
監督・脚本:豊島圭介
出演:市川実日子 大倉孝二

アマノジャクが一番鳥の鳴きまねをしなければ
助かったのに・・・という原作の部分のみを使って
これまたミステリアスなストーリーが出来上がってる。
恐ろしいような、全然恐ろしくないような
滑稽なような不思議な映像。
市川実日子ちゃんはやっぱりカワイイと思う。
それに彼女の演技も好きなのだ。
実日子ちゃんが出てるだけでも嬉しいのに
なーんと旦那さん役が大倉孝二氏!
クロネコにとって最高のキャスティング。
摩訶不思議なストーリだけど原作と違って
ハッピーエンド?!だったので良しとする。笑


第六夜
監督・脚本:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ TOZAWA 石原良純

この演出最高!
さすがは松尾スズキだなあって感じ。
阿部サダヲの良いところを存分に引き出してるし
なんと言っても原作をココまで自由自在に
表現出来てるのは最高!としか言えない。
一見バラバラに壊してるようなんだけど
完全に原作に忠実に描いてるから
やっぱり松尾スズキはスゴイ人なんだなって
感心しちゃった。
この演出は好き嫌いがあるかもしれないし
2007年の流行り言葉を取り入れてるから
5年後に見たら古い印象を与えるかもしれないけど・・・。笑


第七夜
監督:天野喜孝、河原真明
出演:sascha 秀島史香

これまた原作に忠実なストーリー展開なんだけど
第七夜はアニメーション映像になってて
漱石の書いた文体を不思議な不思議な映像で
実現してる。
この映像がこれまた美しいったらありゃしない。
そんで不思議さを醸し出すために出演者のセリフは
英語になってる。
サッシャが流暢な英語を話してるので違和感が無い。
けどこのサッシャってつづりからして親は
ドイツ人なのでは?って思うんだけど。
っていうかどっかで見た人だと思ったら
NHKドイツ語会話に出てたんじゃん!笑
やっぱドイツ人の血が入ってるね。
でも彼の英語にはドイツ語なまりは無かった。笑
このストーリは一番哲学的だと思う。
自殺願望のある人に向けた生きるためのメッセージだと思う。
多分夏目漱石はそうやって自分を思いとどまらせて
居たんだろうなと取れる気がする。
美しい映像の中から深いメッセージが届くと思う。


第八夜

監督:山下敦弘 脚本:長尾謙一郎
出演:藤岡弘、 山本浩司

実はシリーズの中で第八夜が一番面白く無い。
原作も面白く無いし、この映像もアタイは好きじゃなかった。
意味が良く分からないし、ってそもそもこの原作に
意味なんて無いと思うけど。
でもそれでも何だかなあと。
とにかく原作ともかけ離れてるし
原作どおりでも映像化は困難を極めるものだと思う。
思うけどいまいちだったとも言える・・・。


第九夜
監督・脚本:西川美和
出演:緒川たまき ピエール瀧

原作では小さな男の子をつれた女性が
家を出て行った旦那さんの無事を祈って
お百度参りをする内容なんだけど。
西川美和監督はさすがーって感じで
この原作を使いこなしてる。
同じシチュエーションだけど旦那は
赤紙が来て戦争に行ったという設定。
これは上手いなあと思った。
漱石が原作を書いた時代は明治だから
太平洋戦争なんて無かったんだけど
この設定はまさに太平洋戦争時代の女性像なので
何だかかなりしっくりくるのよね。
でも実は旦那は・・・っていうオチも上手く出来てる。
お百度参りをする着物姿の美しい女性が
緒川たまきさんってところも最高のキャスティング。
着物がもっとも似合う女優さんと言えば
誰が何と言っても緒川たまきさんだとアタイは思ってたので
西川監督ったら、良く分かってるなあと嬉しくなった!
たまきさんにはもっともっと映画に出てほしいな~


第十夜
監督:山口雄大 脚本:山口雄大、加藤淳也 脚色:漫☆画太郎
出演:松山ケンイチ 本上まなみ 石坂浩二 安田大サーカス

正直言ってグロい気がする。
原作のブタを元にちょっと違うストーリーになってる。
石坂浩二ったらこんな役でもいいんだ・・・って
ちょっと呆れるかなあ。笑
それより驚くのが本上まなみさん。
そんな鼻の演技をやっちゃっていいんすか?!って感じで。
美しい人がやるからいいのかもしれないけど。
でも驚いた。笑
松山君はやっぱり演技が上手いんだけど
この役こそ松山君である必要性を感じなくて・・・。
ところどころ原作に忠実なので面白い演出だと思う。
でもこの映画を見たら豚丼が食べれなくなるかも。


プロローグ・エピローグ
監督:清水厚
出演:戸田恵梨香

こういうプロローグとエピローグになるのは
しょうがない気がするけど、10本の作品が持つエネルギーが
スゴイ分、この冒頭と最後の部分が安っぽくなってたかな。
戸田さんて確か最近注目されてる人だったような気がするけど
アタイは特に何も感じなかったなあ。
アタイの目が曇ってるんだろうなと。

この映画は荒唐無稽な原作に荒唐無稽な演出で
監督たちが挑んでるので大変面白いと思う。
アタイは一、三、四、五、六、七、九夜が
非常に気に入ったし好きだなあと思う。

原作に忠実なのに特異な演出効果とすっとんきょうさで
秀逸な作品を作り上げているのは
松尾スズキ氏による第六夜だと思う。
原作を元にさらなる解釈を加えて
作品レベルを上げているのは
第三夜、第四夜、第九夜だと思う。
そしてアニメーションの第七夜も非常に素晴らしい
出来具合なので
全体的にこの映画は凄く良いと思う。


映画評は
☆☆☆☆:星4ツ
夏目漱石のぶっ飛んだ頭の中を
映像で表現するにはぶっ飛んだ監督の哲学が必要。笑
オチの無い意味不明な世界こそが夢の世界なので
自分も夢を見てる感じで楽しめると思う。
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by kuronekomusume | 2008-11-03 07:31 | 映画評 | Comments(0)