死して屍拾う者無し

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映画評/「乱歩地獄」

こないだ日本に帰ったときに買ってあった
DVDを見たので感想を。
公開中から見たくてしょうがなかったんだけど
既にこっちに引っ越してきてたので
タイミングが悪くて今まで見れずじまい。
で、やっと見れた。
4本のオムニバス形式なのでそれぞれで
感想を書いてみる。
ストーリーは完全ネタバレなので
見る予定の人は読まないでね。
あと、この映画はグロテスクなので
アタイの表記もグロテスクかも。
食事中とかだと完全に具合が悪くなると思うので
そんな人も読まないでね。


「乱歩地獄」
原作:江戸川乱歩
公開:2005年

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「火星の運河」
主演:浅野忠信
監督・脚本:竹内スグル

正味5分くらいの映像で音声が一切無い
ちょっと抽象芸術みたいな映画。
何と言うかつかみどころが全く無くて
意味がさっぱり分からない気分になること
請け合い。
最初ミュートにしてあるのかと思ったけど
意図的に音声が無いらしい。
アイスランドかどこかでロケをしてる
らしいんだけど、
ものすごく神秘的な場所で撮影してる。
最初CG処理かと思ったくらい
現実離れした映像になってる。
意味はちっとも分からないけど
映像美としてはなかなか良いのでは。
浅野氏の肉体美にフォーカスした
映像がとても斬新に見える。
とにかくこの映像は芸術の域に入ってる気がする。

でも意味は良く分からない。
原作も読んでないし、原作とも多分
かなり違ってる気がするので
なんとも表現しがたい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「鏡地獄」
主演:成宮寛貴、市川実日子、
小川はるみ等
監督:実相寺昭雄
脚本:薩川昭夫

話鏡職人の成宮君のところに
群がる年増の女たちが次々と怪死
していくお話。
鎌倉の老舗古美術商が舞台。
くらーいトーンの映像で
和のワビサビを表現してる。
和鏡がストーリーの中核なので
どのシーンにもふんだんに鏡が
取り入れられていて、
映像としても斬新で効果的。
よくぞまあココまで計算してるなーと
言う映像が楽しめる。

怪死事件を調べる名探偵、明智小五郎を
浅野忠信が演じてる。
浅野氏の演技は好きなんだけど
この明智小五郎はちょっとアタイの
イメージとは違った。
明智さんはそんな軽々しくは無いのよ。
もっと紳士的で実直なイメージなのだ。
奥様が精神を病んでいる・・・と言う
設定だったんだけど、
その病んだ奥様の役が市川実日子ちゃんだった。
ミカコちゃんの演技にはいつも
ハッとさせられる。
なーんか惹きつけるものがあるのよね。
アタイの大好きな女優さんなのだ。
に比べると・・・この作品での浅野氏は
ちょっとイマイチだったかなあ。
アタイの個人的な印象だから
一般論とはまた違ってそうだけど・・・。

江戸川乱歩の小説といえば
エロスとグロテスクがテーマなので
どの映像もそれを表現してる。
と言うより避けて通れないと思う。
実相寺監督はこの映画で
SMエロスを表現してたけど
なーんかこぎれいな感じだったかなあ・・・。
迫真に迫るものは無かったなあ。
そういう演出なのかもしれないけど。
淡々としてたというかねえ。
成宮君が女性と絡んでもどうにも
リアリティに欠ける気がして。
気のせいかなあ。
作品全体に迫力が感じられなかったんだよねえ。
でも多分あの独特の雰囲気を好む人は
いるんだろうね。
アタイはあまり好きじゃなかったかな。

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「芋虫」
主演:松田龍平、岡本夕紀子、大森南朋
監督:佐藤寿保
脚本:夢野史郎

この作品は・・・
凄すぎた。
予想をはるかに上回るグロさと言うか
エロさと言うか。
脳髄にショックを与えられる作品。
想像できない展開と言うか
内容がスゴイんだけどそれに負けない演出と
映像で原作を上回ってる気がする。
まったくもってさわやかの対極にあるような
ストーリーだし、見てるときも見終わったときも
気分は晴れないのに
なのにものすごく脳に印象深いというか
強烈なインパクトを与える。
とにかくアタイの想像を超える作品だった。
江戸川乱歩がこの映像を見たら
ものすごく満足したんじゃないかなあと思う。

クロネコはこの作品も読んだ事が無いんだけど
でも間違いなく原作の世界観を
見事に映像化してるに違いない!
って言う自信が沸き起こった。
アタイが撮ったわけじゃないのにね・・・。笑
原作に忠実に映像化してるんじゃなくて
映像の世界として別のものとして
確立している気がするというか。
いい意味で裏切ってるだろうし、
でも乱歩が表現したかった事を
見事に見せてるんだろうなーと。

とにかくスゴイ。
究極の愛と言うか。
軍人の妻が旦那を愛するあまり
これ以上戦争に取られるのを阻止するため
旦那の手足を切断し、
芋虫のようにしてしまう。
そしてそんな不自由な体になった旦那さんの
世話をしながら愛情表現をする。
そしてそれを天井から覗く秘書。
最後には妻も秘書にお願いして
手足を切断してもらう・・・

そんな内容。

いやー、この内容を映像化しようと
思うこと自体、この監督頭がちょっと尋常じゃないね。
でも尋常じゃないんだけど、
実現してるんだよねえ・・・。
とにかくスゴイの一言。
何がスゴイって・・・。
芋虫にされた軍人さんの役を見事にこなしてる
大森南朋さんだよ。
アタイ前から大森南朋さんの役者魂には
恐れ入ってたけど、この役を見て不動になった。
彼こそが日本で一番の役者さんだと思う。
前々からこの人ただものじゃないなー
って思ってたけど、確定だよ。
手足の無い包帯まみれの軍人役を
熱演できる役者さんてあんまり居ないと
思うんだけど、
大森さんはこの映画を撮影した時は
もう無名じゃなかったし、
そこそこ名前も知られてたと思うのよね。
なのに守りの体制じゃないんだよね。
その役者魂にアタイは惚れるよ。
オトコっぽいなーと感心しちゃうというか。
つーか、この役って今まで積み重ねてきたものを
壊してしまうんじゃ?
ってくらい壮絶な役だと思う。
リスクの方が高いのにあえてやっちゃう
大森さんは本物だと思う。
役者として演じられる役の層が厚すぎる・・・
何でこんなに幅広く色んな役を
こなせちゃうんだろう・・・
ってとことん感心しちゃった。
とにかくリスペクト。
クロネコの中では大森さんがベストアクターだよ。

女優の岡本さんも凄かったなあ・・・。
なんかこの映画一つ間違えると
ポルノっぽいんだけど
その割りにグロイと言うか。
うーん。
形容しがたいわー。

そんで、その究極の藍の姿を覗き見してる
書生の青年こそが、これまたアタイの大好きな龍平君。
龍平君は顔が好きとかって言うより
あの目と雰囲気が好きなんだよね。
もごもごしゃべる感じとか
無気力な感じと言うか
中性的な雰囲気をたたえてて。
なんとも妖艶なのよね。
そこに居るだけで良いって言う。
数多くの監督さんたちがみんな口をそろえて
「松田龍平はそこに居るだけで
雰囲気を持っているからすばらしい!」
って褒め称えるんだけど
アタイにも同じようにそこが魅力的に
映るんだよねえ。
不思議な人だよね。
あのオーラは弟さんには無いんだよ。
そして龍平君が出てる映画は
大抵アタイ好みであることが多いんだよねえ。笑

この映画はそんな特別龍平君が
あの役を演じる必要があったのか
いまいち分からなかったけど
でもまあそれはそれとしておくかなーと。
大森さんの方がこの作品は強烈だからね。
いやー、とにかくショックな映画だったわ。
ちなみに芋虫の映像とかはぜんぜん
出てこないからその点は安心。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「蟲」
主演:浅野忠信、緒川たまき
脚本、監督:カネコアツシ

芋虫が強烈過ぎたのでこの映画はそんなに
ショックとかを受けないんだけど
この映画だけを見たならそれなりに
ショックかもしれない。笑
でもこの乱歩地獄シリーズのなかでは
アタイはこの「蟲」が一番好きかな。

映像のポップさがものすごくステキだし
全体的にスタイリッシュなところもいいし、
何と言ってもストーリーそのものは
かなりヤバイ内容で、
ともすればくらーい感じになるはずなのに
ちょっと笑える感じになってて
その差し引き加減がものすごくちょうど良くて
非常に良く出来てる。
この作品ではエロスはあまり出てこないけど
グロテスクの方がメインかなあ。
でもそのグロテスクさも、ポップな感じで
調和されてて気持ち悪く無いから不思議。

この監督はアタイは全く知らないけど
本当は漫画家さんなんだそうで
この映画が初監督作品なんだって。
アタイがこの映画を見て思ったのは
カネコさんはものすごく才能があると思う。
すばらしいセンスがあるし
ストーリーのまとめ方もオチのつけかたも
絶妙で、映像美もすばらしいし、
なおかつ乱歩の世界観もポップに表現してて
とにかくスバラシイ!の一言。

浅野氏は乱歩地獄の全作品に出演してるけど
この作品が一番きちんと役を演じてる。
そしてこの作品で浅野氏がとてもとても
楽しそうなのが伝わってくるので
それも見ていて和むのよね。
浅野氏の役柄は変態なのに
何故かゆるい気分で見れちゃう。
不思議~。

そんで相手役の緒川たまきさんがステキ。
たまきさんはアタイの好きな女優さんの一人だから
彼女が出てると大変嬉しくなる。
相変わらずお美しいし。
そんなに演技は上手じゃない気がするんだけど
雰囲気が独特だからそれでカバー!
アタイはたまきさんを見れるだけで
ハッピーなのだ。

この作品では舞台女優と言う役柄なんだけど
ストーカー運転手(浅野忠信)に
ある日殺されちゃう。
浅野氏は大好きな美しい女優を
美しいまま保存したい!と考えて
ホルマリン漬けにしようとしたり、
絵の具で塗りたくったり、
石膏を塗りつけたり、
腐っていく死体に色々手を加える。
そのうち蟲が湧いて死体も腐るのに
頭がイカレちゃった浅野氏は
死体に埋もれてるところを救出される・・・

って言う書いてると吐きそうに
なっちゃうようなストーリー。

乱歩節さくれつだよね。
キモ過ぎる・・・。
なのに映像だと緩和されてるんだよね。
それは緒川たまきさんが美しすぎるからなのか
映像がポップだからなのか、
必死な浅野氏がコミカルに見えるからなのか。
その全部が理由だと思うし、
カネコ監督の手腕がスバラシイからなんだろうなーと。

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実はアタイは小学生の時
かなり江戸川乱歩ファンだった。
少年少女向け探偵明智小五郎シリーズとか
怪人20面相シリーズをほとんど
読破してたと思う。
アタイも探偵になりたい!って本気で思ってたし
出来れば明智小五郎に弟子入りして
小林少年のライバルとして働きたい!
とまで本気で考えてた。
だから小林君が時々探偵道具を駆使してるのを
読んで、アタイも真似事グッズを
自分で作ったりしてた。
そんな小学6年生・・・。
ちょっと痛い子だよね。
でもアタイの頭の中は探偵一色だったのよ。

んで、中学生になって、
大人向け江戸川乱歩の小説があることを知って
読みはじめたんだけど・・・。
その内容に驚いた。
少年少女向けとえらい違いなんだもん。
何だこのエログロは?ってことで
びっくりしてもうたのだ。
乱歩といえば石膏。
すぐ死体を石膏に埋めちゃうんだよね。
んで土蔵の中に隠しちゃったりとか。
倒錯した世界を表現させると本当に
乱歩ったら・・・って感じで
驚く事しきり。

正直中学生にはエログロ過ぎたかなー。
大人向けだとあまり明智小五郎とか
あんま出てこなくなるからね。
小林少年も出てこない・・・。
二十面相も出てこないなあ・・・。

ま、それでも乱歩の世界って
独特で惹かれるものがあるのよね。
これまでも乱歩を題材に映画が撮られてるけど
このシリーズはもっとも原作を
上手く映像化してるんじゃないかなーと。
芋虫と蟲は優れた映像だと思うんだけど
内容が内容だからねー。
死体処理とか、手足切断とかって
最近は猟奇殺人が多いから
この映画も敬遠されちゃいそうだねえ・・・。

まあ、このシリーズは映像としては
レベルが高い!と言えると思う。
ただ、本当にエログロなので
万人受けは絶対にしないと思う。

クロネコの評価は・・・
☆☆☆☆で星4ツ。
でもまーったくお薦め出来ない。
エログロが平気な人、乱歩ワールドが好きな人は
映像ショックを受けられるのでぜひどうぞ。
痛みを感じる映像じゃないので
そういう意味では大丈夫だしね。
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by kuronekomusume | 2009-03-26 05:59 | 映画評 | Comments(2)
Commented by sandonomeshi at 2009-03-27 17:49
う~ん、エログロはあんまり得意じゃないけれど、Kuronekomusumeさんのコメントから感じられる映像の面白さに興味津々。観たいような・・・。
Commented by kuronekomusume at 2009-03-28 06:14
sandoさん、日曜にDVDをお持ちしますので気が向いたらお持ち帰りくださいな~。笑