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死して屍拾う者無し

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オフィスK 映画評/ブラザー

マジ、すげえ!
今までの思い込みとか、偏見とか、考え方とか
すべて帳消しになった~。
本当に今更だけど、月並みだけど、
「タケシ・キタノ」はスゴイっすね!

ロンドンで買ってきてた北野映画の、
「ブラザー」DVDを今日見たんですけど。
ホント、見ながら引き込まれて、圧倒されちまいました。

アタイ、北野映画はこれで3本目。
外国人の友達は、全員が口をそろえて
「キターノ・テケーシはすばらしー!!!」
って言ってたんで、
まあじゃあ見てみますかね?っていう気持ちで
2年くらい前に最初に見たのが、
こともあろうか「座頭市」。

アタイ割と時代劇好きな方だと思うけど。
そんなアタイが見ても、何で外国で絶賛されたのかが
ちっとも分からなかったんすよね。
なんかね、こういっちゃあ何だけど、ストーリーが
ありきたりっつーか、良くある時代劇の勧善懲悪モノ。
そりゃあ、有名な話だからそれを元にしてたら
そんなもんなんでしょうけど。
それに役者の声知ってるから、黒幕が誰だかも
最初のシーンで分かっちゃって全然面白みが無いし。
リズミカルな演出とシーン運びが特に
外国人受けしたっぽいけど、それと時代劇って
あんまり関係無いような気が・・・。
それにね、何といっても座頭市演じる主役のタケシ殿が
どうもしっくり来ないっつーかね。
何で金髪なのよ?とか、
クライマックスでジャジャーンとカッコ良く登場し過ぎ!とか、
あのセリフの言い方は時代劇にそぐわない!とか。
数え上げたらキリが無くて。
もう、はっきり言って「普通の映画」だと思います。

でも世界のキタノなんだから、こんなはずは無い!
って思って見た二本目が「キッズリターン」。
アタイのドイツ語の先生お薦めの作品。
金子賢と安藤君が出てるヤツ。
これはね、悪く無かったですよ。
タケシ殿が出演してないからか?!って思ってみたり。
でもね、ストーリーがね、個人的に好きじゃなかったんすよ。
何だか竹原慎二のボクサーストーリーとかぶるっていうかね。
竹原ストーリーは好きだったんですけど。
(数年前に2ヶ月くらい猛烈なファンだったので本を買って読んだ・・・)
まあソレの映画版?!って思えばいいんですけど。
アタイはなんとなーく好きじゃなかったっていう感覚的な話。

まあそんな感じだったけど、
まだまだ2本でタケシを判断するのは時期尚早じゃないかと思って。
ブラザーを見たわけです。
で、結果すばらしい!って思ったわけです。
やっぱりタケシ映画の真髄は「暴力・血・死・静けさ」
なんじゃないかと。
ブラザーにはコレが全て盛り込まれてて、
新しいやくざ映画だ~!!!と感動したのでした。
そりゃあ、ヤクザもんですから、見てても「ひやあ~」って
目を覆いたくなるくらい暴力・暴力・暴力のオンパレ。
指詰め、ハラキリ、拳銃自殺、銃殺、殴り合い・・・って
次から、次へと最後までそんな感じ。

なのにね、映像が美しくて、色彩がキレイで、
シーン全体がとても静かで無駄が無い演出。
誰も感情的な演技をしてる人が居ないのに、
作品全体に悲しい雰囲気が見事に流れてる。
多分それはジョー・ヒサイシ氏の音楽のせいなんだろうなと。
彼の音楽が入るだけで、ガラリと雰囲気が変わって、
作品が重厚になるからホントすごいと思う。

あとね、大げさじゃないのに役者の演技が
これまた、もうすんばらしいの。
北野映画の常連俳優といえば・・・
ススム・テラジマだけど。
(アタイのドイツ語の先生は彼の大ファン。笑)
マジで彼はスゴイっすね。
印象に残りまくるっていうか。
小柄で痩せ型なのに、インパクトでかいっていうか。
「自分アニキに命かけてますんで。」
って言ってコメカミに銃当てて自分の頭撃ちぬくんすけど。
さ、サムライだ・・・!って感じ。
ドイツ語の先生じゃないけど、し、渋すぎ~!って思いました。

あとね、大杉連さんも忘れちゃいけない。
もう品がありまくりなのよね。格が違うのよね。
ヤクザなのにね、渋いんすよ。
指詰めだけじゃなくて、ハラワタまで自分でえぐりとっちゃって。
あの後死んじゃったのかな~って悲しくなるけど
ヤクザじゃしょうがないよね・・・みたいな心境にさせる
すばらしい演技。
ハラキリー!これまたサムライ魂だわね。
もしや、「ヤクザに見るサムライ魂」もタケシの演出目的なのかも・・・?!

でも個人的に一番スゴイって思ったのは、真木蔵人。
彼こんなに演技上手かったっけ?ってくらいスゴイ。
彼こんなに英語上手かったっけ?ってくらい違和感無い。
彼こんなにガッシリしてたっけ?ってくらい黒人さんたちに
溶け込んでる。
アメリカに留学してる日本人の発音と態度!みたいなのが
上手く出てるなあって感じで。
まあとにかく彼の演技力にもアタイは驚いちゃったんすよ。

渡哲也がヤクザの組長だったんだけど、
品があるヤクザねえ・・・。
アタイとしては、あの人刑事の印象が強いんだけど・・・。
刑事もヤクザも紙一重ってことでまあいっかな。笑

いやあ、映像、音楽、ストーリーとどれをとっても
申し分無かったっす。
上映してた当時は、映画のCMが好きじゃなくて。
タケシの「ファッキン・ジャップくらい分かるんだよ、コノヤロー!」ってヤツね。
何かつまんなそうねって思って、全然見る気無かったけど、
コレは見て正解っす。

あとは、「この男凶暴に付き」、「花火」、「菊次郎の夏」、
「ソナチネ」を見なくてはね。
全部見た上で総合評価しなくてはね。

タケシ映画は暴力的なのが多いって言われてますけど、
多分それが外国で受ける理由なんじゃないかなと。
ハリウッド映画だと、たとえば誰かが拳銃を持って女性を
人質にとってたら、登場したヒーローはその犯人だけを
打ち抜いて見事人質も助ける!
みたいな感じが多いと思うんですけど。
タケシの映画は、どっちも撃ち殺しちゃうんですよね。
え?って展開になるんですよ。
でもコレはタケシに限らず、今外国で受けてる邦画の
特徴じゃないかなと思うんですよね。
邦画だけじゃなくて、バイオレンス映画全般の特徴
じゃないかな~と思うんですよ。
やられるのが悪役だけとは限らない展開が、なんだか
新鮮というか。
死があふれているのに、感情過多じゃない演出と演技が
またより効果的な感じになるっていうか。
バイオレンスムービーが苦手な人は見ない方がいいですけど。
アタイはホラーとか嫌いなのに、バイオレンスムービーは
見ちゃうんですよね・・・。なぜかしら?

いやあそれにしても期待せずに見た映画がすばらしいと
得した気分っす。

ちなみにこのDVDはイギリスで買ったんですけど。
映画がアメリカロケが大半だったので、ほとんどセリフが英語。
当然日本語字幕なんて出やしない。
日本人俳優のセリフは全て英語字幕付きだったけど。
まあ幸いダイアローグ命っていう映画じゃなかったので、
何とかついていけました~。
ダニーっていう黒人の弟分もイイ味だしてました~。
タケシのことを「アイラブユー、アニキーッ!」って言う
ラストシーンがまたいいんですよね~。

本編は1時間半くらいだけど、オマケ収録の
インタビューやら、撮影シーンやらの映像が1時間半くらいあった!
これ多分ジャパニーズエディションだとすごく高いんじゃないかなと。
タケシの生い立ちから、芸人暦、スキャンダル暦、事故暦と
すべてを網羅したドキュメンタリーが入ってて、
そんなこともありましたなあ~って懐かしかったっす。
今度「戦場のメリークリスマス」を見てみようかな。
by kuronekomusume | 2006-01-21 08:08 | 映画評 | Comments(0)