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死して屍拾う者無し

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映画評/「バベル」

バベル
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、
役所広司、菊池凛子
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
公開:2006年

話題のバベルを見ました。
一部ネタバレですからいつもどおり
見る予定の人は読まないでくださいね。

この映画はモロッコ、メキシコ、東京それぞれが
舞台になっているので、モロッコ語?スペイン語、
日本語、英語でそれぞれ役者は演技をしてます。
普通ドイツだとすべてドイツ語にふき替えられるんですけど
幸いにもこの映画は、モロッコ語、スペイン語、
日本語はそのままでした。
ドイツ語字幕が出るようになってて。
英語のところだけがドイツ語吹き替えになってたので
ブラピとケイトはドイツ語をしゃべってましたね。
変な感じではあるけど、アタイには非常に
分かりやすかったです。
字幕だとやっぱり理解しやすいんですよね。

菊池凛子ちゃんがろうあの少女役ってことで
話題になってますね。
彼女って何歳でしたっけね。
役柄は高校生だけど
お肌がやっぱり20代中盤だから
日本人の目はごまかせないかな。
彼女ちと老け顔じゃないっすか?
映画評/「バベル」_c0016407_1595126.jpg

でも演技はすごかった。
迫真に迫るというか、悩める多感な少女を
見事に演じきってるんだけど。
相当おバカな感じでもあるんだけど。
ノミネートされるだけあるかも。
ろうあだからセリフ無いんだけど
伝わるっていうかねえ。
っていうか、ヌード披露してたんすね。
知らなかったのでヤマトナデシコの
クロネコはちと驚いた。笑

日本というか東京の?!女子高生の
あちゃーって部分を全部ひっくるめて
この映画は見せてくれてるんだけど。
日本の女子高生は全部ああなんだ・・・と
世界中に思われるのは何となく不本意というか。
アタイとしては恥ずかしいなあって気がして。
一緒に映画を見てた、東京在住のドイツ人友達フェイは
「あれが日本の女子高生の真実の姿じゃん!」って
言ってたけど・・・。
とはいえ、とはいえ・・・。
その部分は隠しておきたいっていうかさあ。
ドイツ在住としては恥ずかしいんだもん。
それだけこの監督は上手く寸部の狂いも無く
違和感無く日本社会を描ききれてるって
ことなんだけど。
映画評/「バベル」_c0016407_205465.jpg

役所広司はもうアタイの中ではどうでもいい役者かなあと。
(10年ほど前までは好きだったけど)
クドイ演技がちょっと苦手になってきた。
別にバベルでこの役をやるのは
役所氏じゃなくてもいいじゃないの?
って感じがしちゃった。
もう一人の刑事役の人のほうが
良い演技してたな。
ちょっと渡部篤郎を若くしたような感じの人。
あんまり見たこと無い人だけど。
名前も分かんないや。今後活躍するかもね。

けど、女子高生に裸で迫られてNoと言える
日本人社会人男性が果たして今どれだけ
いるんだろ?
未成年淫行事件がわんさか出てきてる
昨今の日本だから、あのシーンは
嘘っぽいなあって気がしちゃったけど。
それはアタイが日本人だからでしょうね。
西洋人社会では、刑事さんの毅然とした対応が
普通の大人の対応ってことだからね。
日本人男性と女子高生は世界基準から見て
相当病んでるってことをこの映画を見て
知るべきだと思うな。

映画評/「バベル」_c0016407_212220.jpg

そうそう。
思わず忘れがちなんだけど、この映画には
ブラピも出てる。笑
なんだか悲壮感漂う演技がとっても見事。
やっぱり何だかんだ言って彼は演技が上手いのね。
モロッコの少年たちの無邪気さとそれゆえに起こる
悲劇がまたまたすごく悲壮感を与えてて。
メキシコのシーンでは結婚式とイミグレーションの
落差が激しくてこれまたすごい。

バベルの塔は聖書に出てくるお話でしたよね。
かつて人間はひとつの言語をしゃべっていた。
人間たちが天に届く建物バベルの塔を作ろうと
計画したことから、傲慢な人間どもめっ!と
神の怒りを買ってしまい、
罰として意思疎通が出来ないようにと
神はわれわれの言語をバラバラにしてしまった・・・って話。

言語が通じないことで、
意思疎通が図れない。
言語が通じなくても心が通じる。
言葉が出る前に行動を起こすことで
悲劇が生じる。
言葉が出ないから行動であらわす。
これらのテーマを「バベル」という言葉で
監督は表現しているんだろうなと。

やるせない事件がメキシコ、モロッコで巻き起こって
その当事者たちはどうにもできなくて
悲劇に巻き込まれてしまう。
一方で悲劇が去ったけども、
また他方では悲劇が起こってしまう。

とにかくやるせない気分でいっぱいになる映画。
人間って無力。
運命の前では無力。
自業自得とはいえ無力。
絶望的な中にも監督のやさしさを感じる映画。
映画も長いのに退屈じゃない。
上手く3エリアがつながっていて。
時系列が前後してて。
とにかく監督の腕がいいんでしょうね。

あとでいろんなことを考える映画だから
良い映画なんだと思う。
重いようで重くない。
でも軽くも無い。

☆☆☆☆:星4ツ(すごく良いのでオススメ。)
by kuronekomusume | 2007-01-04 02:01 | 映画評 | Comments(0)