先週見た映画がすんごい良かったので
映画批評をめっちゃ久しぶりに。
クロネコはもう10年くらい洋画見れない症候群なんですわ。
加えて。
邦画もあんま見る気起きなくなってるので
ほとんど見てない。
去年見た映画はTHE FIRST SLUM DUNKだけだよ。
アニメっすわ。
でも良かった。
なんか絵がめっちゃよくて。
キャラ画面を紅白歌合戦で見たときも
ドキドキした。
なんつー色気のあるキャラを井上雄彦は描いてるんだ?!と。
中学高校時代にリアルタイムでジャンプで
連載してる時に読んでたけど。
あの時より格段に絵が上手くなってるよね。
ドイツで公開されたのが2023年12月で
日本公開のほぼ1年後というね。
ドイツ語吹き替えがメインだったけど
クロネコは映画館を探して
日本語オリジナル+英語字幕ので見ました。
英語字幕は一切見ず日本語のみに集中して。
アニメをドイツ語で見るのは無理よね。
スラダンの話はおいておいて。
今年最初に見た映画が非常に良かったのよ。
クロネコの洋画見てない歴が無事に終わったよ。
今回の批評はPERFECT DAYSです。
PERFECT DAYS
主演:役所広司
監督:ヴィム・ヴェンダース
ドイツ公開:2024年1月
ストーリー:
役所氏演じる平山は60代の1人暮らし男性。
早朝に起きて、決まったトイレをいくつか
車で周って清掃員の仕事をしている。
仕事から帰ったら風呂屋に行き、
チャリで浅草地下鉄駅の地下街の
飲み屋でお酒と晩御飯を食べて帰宅し
寝る前に読書してそのまま就寝と言う生活を過ごしている。
そんなルーティンの中で平山は小さい喜びを見出し
時には顔見知りと言葉少ないながらも触れ合ったりする。
役所広司がトイレ清掃員をやってる映画って言う
事前情報のみで見たので、いろいろ驚いた。
まずね、東京都内のトイレってばオシャレ過ぎ。
進化しまくってて、今ってこんななの?!って驚いたね。
クロネコが想像してた公衆トイレは↓こういうのなんす。
タイル張りのね。
こういうところを掃除する映画かあ。
あんま便器見たくないかも。
とか思ってた。
でも。
映画に出てきたトイレはすんごいオシャレトイレばかりで。
びっくりだったわ。
便器も全部キレイだった。
TOTOの名前がエンドロールに出てたので
便器はTOTOなんだろうね。
鍋島松濤公園トイレ/隈 研吾↓
恵比寿公園トイレ/片山 正通 ワンダーウォール↓
こちらは安藤忠雄↓
はるのおがわコミュニティパークトイレ/坂 茂↓
代々木深町小公園トイレ/坂 茂↓
この坂茂氏デザインのトイレは中に入って
カギを閉めると透明な壁にスモークが入って
中の様子が見えなくなるというデザインで。
このトイレはドイツでも記事になってたので
見覚えがあった。
代々木八幡公衆トイレ/伊東豊雄↓
映画見たあと、映画についてヴィム・ヴェンダースの
インタビューとかを見て知ったんだけど。
東京トイレプロジェクトなるものがあって。
渋谷区内17箇所に建築家がデザインした
トイレがあるので、それを見てインスパイアされたら
芸術作品を何でもいいので制作して欲しいって
ヴェンダースは招待された一人だったとかで。
で、見てるうちに映画作ろう!って思ったんだって。
なので、都内のトイレすべてがこんなオシャレトイレなわけではなく
渋谷区17箇所がすごいってことらしい。
で、映画には全部は出てこなくて↑にクロネコが
載せた場所は少なくとも出てくる。
てかこんなトイレをベルリンで作ったとしても
秒でスプレー落書きされて終わりだよ。
欧米だと無理なプロジェクト。
平山の生活ベースはトイレ掃除。
柄本時生演じるちゃらんぽらんな若者同僚や、
時生がアタックしてる女子や
突然家出してくる姪のニコちゃんや、
確執のある妹や
浅草地下鉄飲み屋街の店長や
週に一度行く小料理屋の女将やら。
平山は淡々とした生活を送りつつも
いろんな人とふれあいがあるので
ルーティンを見せられてるんだけど
その日々の暮らしがサッパリしてて
でもほんわかしてて心地良いんだわ。
映像がきれいというのもあるけど
清掃員だから掃除をしてるので
画面からあふれ出す空気も清潔な感じがするというか。
お風呂屋で汚れも洗い流されるしで。
見てると気持ちが浄化される。
そこがまずこの映画の良いところだね。
主人公は役所広司なので演技力に
安心感があるんだけど。
正直クロネコは役所氏の演技は
ドラマとかだとくどいというか
顔が派手な分、ちょっとうるさく感じてて。
こないだ見たVIVANTも迫力があって
貫禄もあって別にミスキャストじゃないんだけど
でもなんか演技が過剰に見えるというか。
むかーしむかし小学生の頃に見た
宮本武蔵とか三匹が斬るの時代劇をやってた
役所氏はすごく好きだったんだけど。
現代劇だと存在感がありすぎて
映画だと自然に見えなくてあんまり好きでは
無かったんだ。
なのでこの映画もそんな感じかなと思ってたんだけど。
全然違った。
そぎ落とされた感じの演技で驚いた。
表情も抑えてたし、感情も抑えてたしで。
こんなすごい演技が出来る人だったのかーと
やっと認識があらたまった。
感情を抑える演技のほうが役所氏の良さが出る。
それを見抜いて演出したヴェンダースは凄いと思ったね。
日本の映画監督にもそういう演出をして欲しいわ。
静かな役の役所氏がもっと見たい。
役所氏もPerfect Daysのインタビューで
こういう作品性の高い映画にばかり出たいです
って言ってて。
だろうなあって思った。
クロネコもこういう演技をする役所氏だけを見たいよ。
この映画の中の役所氏はのびのびと楽しそうに
演じてるんだわ。
役所氏が楽しそうなのがこれまた画面越しに
伝わってくる。
そりゃカンヌで主演男優賞とるよねって納得の演技。
見てる人を幸せにする演技。
役所氏は演者のみならずエグセクティヴ・プロデューサーも
この映画では担当してる。
そんでもって。
役所氏のみならず、他の役者さんたちもみんな
のびのび演技をしてて。
みんな幸せそうなのがあふれてて。
それもこの映画のいいところ。
画面の向こうに居る人たちがみんなハッピーそうなのよ。
役者さんたちが嬉しそうなのが分かるので
見てる方も嬉しくなる。
そんでもってそんでもって。
演技派役者さんしか出演していないと
映画の安心感が半端無いのよ。
ここ15年くらいで邦画のクオリティが落ちたのは
演技派で役者をキャスティングしなくなってるからで。
人気だけで配置されたんだろうなーとか。
こんな今風の顔立ちの俳優、興味ないーとか。
そういう余計なことを邦画見てるとどうしても
考えてしまうけど、そういう不満がこの映画には一切無い。
知らない女優さんとか俳優さんがチラホラ
出てくるけど、みんなちゃんとヴェンダースの
おめがねにかなう演技が出来る人で
オーディションで選ばれてるのが分かるんだ。
だから画面に無駄が無いし
シーンにも無駄が無い。
役者さんたちが完璧すぎて嬉しいし
あの役はどういう経緯で誰が探してきたんだろうとか
考えるとワクワクする。
事務所の力じゃないルートってことよね?みたいな。
キャスティングだけでこんなに落ち着いて
安心出来る映画って今の邦画に無い。
でもそれはこの映画が特殊だからなしえたことで。
作品性を尊ぶのと、ヴェンダースが監督ということで
製作委員会ありきじゃないし
観客動員数を見込むには集客力のある役者を
まずはキャスティングして・・・みたいなやり方が
不要だったからで。
実力不要で人気のみの役者を排除出来ると
こんな素晴らしいことになるんだ!って
もうそれだけで感動するよ。
そんで。
名のある役者を贅沢に使ってるのがこれまた
感動的なのよ。
舞踏家であり役者でもある田中民さんを
ホームレスとして出演させてて。
田中民さんじゃーん、ってなる。
しかも役所氏にしか見えないという設定らしく。
みんさんとしてはヴェンダースに公園で踊ってください
って言われたのが嬉しかったそうで。
ヴェンダースはピナ・バウシュのドキュメンタリ映画も
撮ってるので、舞踏家としてのみんさんのことを
リスペクトしてるんだろうね。
そんで。
石川さゆりのことも贅沢に使ってた。
クロネコはベルリンの映画館で見たんだけど
あんまり日本人の観客はいなくて。
大半はドイツ人で。
この人ら石川さゆりのすごさを知らないんだろうなー
天城越えを聞いたこと無いんだろうなーと思いながら見てた。
小料理屋のママの役だから
常連客にママって呼ばれてて。
ドイツ語字幕もMamaで。
エンドロールの役名もMamaだった。
ドイツ人にとってママってお母さんのことだから
観客らは?????だったと思う。
なんで料理屋の女将さんをオジサン常連客がママって
呼んでるんだろう?みたいなね。
あれは日本独自の文化だよね。
石川さゆりママが料理やお酒を
常連客に出してたんだけど。
そんときに着てた着物が地味な濃い茶色だったけど
よーく見たら総絞りでさー。
あれめっちゃ高い着物だと思うわ。
でもドイツ人にはその質は分からんのだろうなと
思いながら見てた。
なんなら日本人もあんま分からんと思う。
あんな高価で高級品質な着物を着たママは居ないよね。
半襟は黄色で着物とのコントラストが抜群。
さーすーがーって言うセレクトでしたわ。
帯も高そうでした。
さゆり様美しいのなんの。
クロネコは料理より着物ばっか見てた。
別シーンの洋装のさゆり様もおきれいでした。
誰か役者さんがインタビューで、
ああいう日本の居酒屋の普通の部分をヴェンダースの
映画で映像化されているのが嬉しいって言ってたけど。
石川さゆりは小料理屋にいないし、
あんな良い着物着た人は銀座でもいないかもだし、
あんな歌のうまいママもいないんじゃないかなーと。
ぜんぜん普通の日本の飲み屋のシーンじゃない。笑
柄本時生がアタックしてた女子の役のコが
まあまあど派手なファッションのみならず
顔立ちも独特な感じで。
彼女の本業はダンサーでアオイ・ヤマダさんて言うらしいんだけど
このコは普通の邦画だとキャスティングされないだろうな的な。
だからこそヴェンダースの審美眼すごいなと思った。
でもドアップの彼女の顔を見ながら
誰かに似てるなーと思ってて。
思い出した。
麗子さんだ。
麗子像の麗子さんに似てると思う。
役所氏の姪っ子女子高生ニコちゃん役のコは
モデルさんらしいんだけど。
スクリーン内では瑞々しい感じでとってもかわいかった。
こんな姪っ子クロネコも欲しいな。
で、このコ中野亜里沙ちゃんて言うんだけど。
これまた誰かに似てるなーと思ってて。
黒いドレスの真ん中のコね。↓
思い出した。
テレサテンに似てるわ。
いちいち誰かに似せないと納得しないクロネコなのでした。
平山は下町のすんごいボロアパートに
住んでるんだけど。
よくぞまあこんな場所見つけてきたね!
って感じの昭和感満載のアパート。
風呂無しなんだけど。
1階と2階が平岡んちでさ。
どういう間取りになってるのか
めっちゃ興味深い。
誰か間取り描いて~って思う。
山1階玄関前に首にタオルをかけた平山が居るの分かるかな?↑
この玄関ドアの左側あたりにキッチンというか
炊事場があるんだ。
映画の中ではその後ろは台所兼モノ置き場だった。
玄関からすぐのところに階段があって。
平山の生活空間は2階なのよ。
部屋が二つつながってて。
ひとつが寝室で、もうひとつは盆栽部屋。
↑写真の紫のライトが見える部屋が盆栽部屋。
室内で植物を育ててる。
でもこの写真見ると外にも階段があるでしょ。
あの階段は多分隣の家につながって
平山んちには入れない間取り。
つまり。
平山んちはメゾネットみたいな感じなのかもしれない。
昭和の間取りめっちゃ気になるー。
駐車場に煌々と照らされてる自販機で
毎朝平山は缶コーヒーを買って
それを飲みながら公衆トイレまで車でいどうする。
移動は首都高。
下町に住んでるけどデザイントイレは渋谷区だから
首都高移動がいいんだろうね。
てかさ、役所氏ってBOSSの缶コーヒーのCMに
出てるのに缶コーヒー飲むシーンって大丈夫なのか?
って心配したんだけど。
ちゃんとBOSSの缶コーヒーを飲んでたよ。
しかも毎朝同じ銘柄で、車に乗った時も
BOSSのロゴが見えるようにおいてあって。
スポンサーに気を使ってるのが分かった。笑
移動中の車の中で平岡はカセットで音楽を
聞くんだわ。
ラジオは一切聞かない。
トイレ清掃のオジサンなのに洋楽を聴く。
しかもカセットで。
今朝はこの気分かなーみたいな感じで。
で、そのカセットが年代もので
令和の時代では価値がアップしてるとかで
1本数千円で売れちゃうみたいよ。
とはいえだよ。
昭和生まれのうちらには分かるよね。
車にカセットを置いておくとテープが
伸びちゃうし、カセット本体も色あせてくるって。
直射日光の当たらない場所においておいても
車内は夏場に気温がアップするから
劣化するよね。
だからよっぽどきちんと保管してた人じゃ無いと
高額では売れないと思うんだよなー。
と思いながら映画を見てました。
CDはソフトケースに入れてアタッシュボード?(名前忘れた)に
入れておけば劣化はしないけどカセットはねー。
平山の寝室というかアパートの部屋。↑
足元にある棚にもびっしりとカセットテープがあるし
本棚もある。
本を読むのが趣味で行きつけの古本屋で
本をいつも買ってて。
幸田文とか買ってて。
セレクトが渋いんだけど。
コレって絶対日本人視点で選んでるよねと
思いながら見てた。
ヴェンダースは幸田文を知らないだろうから。
幸田露伴の娘だよ的な。
本屋のオーナーのおもろいオバチャンは
犬山犬子さんだった。
渋いキャスティングだよね。
平山は毎日ランチ時は神社の境内で大きな木を見ながら
コンビニのサンドイッチを食べるんだけど。
ベンチには常連の人たちがいて。
ぼっちOLさんと顔見知りだけどしゃべったりはしない。
このOLさんとの微妙な目線だけのシーンが
一番ドイツ人にはうけてたよ。
みんなくすくす笑ってた。
柄本時生が「金が無いと恋愛できないのか!」の
シーンもうけてたけど、OLシーンの方がドイツ人には
ツボみたいだったね。
クロネコはOLシーンでは特に笑わなかったな。
それより別のベンチに座って猫さわってるオバアサンが
研ナオコじゃん!ってそっちに気を取られた。
Cat Ladyと言う役で一瞬出てたよ。
駐禁チケットを切るオバチャンの役が
松金よねこで。コレも笑った。
一瞬しか出てこない。
浅草駅地下街の飲み屋の店主役は甲本雅弘で。
演技力抜群な役者さんをこんなちょい役で
使う贅沢な感じがまた良いね。
地下街飲み屋は3回くらい出てきたかな。
野球中継を流してて1試合目は巨人VS広島で
2試合目はちょっとわからなかったけどたぶん巨人VS横浜。
なんかこういう細かいところの設定が
日本!!って感じで。
日本人監修なんだなというのが伝わる。
石川さゆりママの小料理屋より浅草地下街の
飲み屋のほうが断然日本の普通の風景だった。
ボロアパートといい、銭湯といい、下町ランドリーといい。
日本人スタッフのロケハン能力半端無い。
すごいいいところばかり見つけてくる。
でもでも。
浅草は外国人が好きな場所だから、あの地下街は
実はヴェンダースが自分で見つけてきてる可能性もあるな。
あそこは逆に日本人は見落としそうなので。
クロネコも昔浅草に知り合いが住んでて
教えてもらって行った事がある。
この映画見てると風景も役者もセリフも
全部日本語だから邦画を見てる気になるんだ。
脚本はヴェンダースと高崎卓馬氏の共同制作なのもあり
違和感ゼロの日本語の内容になってるしで。
共同制作だけど一応洋画だと思う。
でも。
ちょくちょく邦画じゃないことを思い出させて
くれるポイントがあって。
演技とか演出とか音楽とかが、日本人のセンスじゃないのよ。
その際たるものが、ハグシーン。
長年の確執があるけども思うところがある
兄の役所と妹の麻生祐美が涙目になりながら
ハグをするんだけど。
いやいやいやいや。
60前後の日本人の兄と妹はハグはしませんよと。
そんな気持ちで見てしまう。
でも。
あのシーンはハグが無いと気持ちの通じ合いみたいなのが
欧米人観客には一切伝わらないんだわ。
それも分かる。
なので。
ヴェンダースの演出なんだろうね。
兄妹ハグの前に、家出してきてた女子高生で姪の
ニコちゃんとの別れでも伯父と姪が先にハグするんだけど。
日本人の女子高生は伯父さんとハグはしないよね。
しないと思うな。
まずそこで????ってなって、そのあと麻生祐美さんとの
ハグでますますうーんってなるのよねー。
次の洋画的視点。
ロケーション的に下町がメインだからか
浅草とか、スカイツリーを画面できれいに
撮ってたところ。
日本人はどっちかっていうと東京タワーの方が
好きだけど、下町のぼろい感じとのコントラストで
スカイツリーを映してるのかなーとクロネコは解釈した。
そんで。
この映画が邦画じゃないのを常に思い出させる
重要ポイントが音楽。
この音楽ぜったい日本人監督なら選ばないっていうセレクトで。
ドイツ人のオジサン以上の世代が好きそうな
曲ばかりなのよ。
映画タイトルとも関係してるルー・リードの
Perfect Dayは名曲だしクロネコも好きだけど。
日本のオジサンは選ばないでしょ。
他にも車の中で聞いていたのが
Patti SmithのRedondo Beach、
Van MorrisonのBrown Eyed Gir、
The KinksのSunny Afternoonとかで。
オールディーズにもほどがあるんだけど。
日本の60代のオジサンってこんなの聞きますかね?
それこそ石川さゆりなんじゃ?っていうね。
または懐メロ?いずれにしてもJポップ聞いてそうよね。
でも。
妹の麻生祐美が出てきたシーンでちょっとわかった。
運転手つきのめっちゃ良い車に乗ってきたからで。
なので役所演じる平岡は多分良い家の出身で。
父親と確執があって今はボロアパート暮らしをしてる。
つまり。
教養がある。
だから清掃員なのにそこはかとなく品もあるわけで。
多分かつてはビジネスマンだったはずで。
ヴェンダースもそういってた。
とはいえ。
良い家の出の60代の日本人のおじさんって
ルー・リード聞くんだろうか?
オー、サッチ・ア・パーフェクト・デイ~って
口ずざみながらアタイは気になって気になって。笑
てかね、平山って多分長らくそのテープを
聞いてるはずなのに一曲も口ずさまないんだよねー。
そこも気になった。
ちなみに。
ドイツ人は良い家の出身じゃなくても
50代以上だとルー・リードはみんな知ってるよ。
てか40代でも知ってる。
パティ・スミスも。
てか、このセレクトはイギリス人を意識してるんだろうかね?
映画見てると音楽がいつも気になる。
いずれにしても日本人の映画監督も
プロデューサーも絶対思いつきもしない選曲なのは
間違いない。
あと、ドイツ的だなーと思ったのが。
平山と父親との葛藤というかわだかまりかな。
父親はもう認知が進んで死にそうって状態だけど
会いたくないみたいなのを言ってて。
父親を許せないというかたくなさは
ドイツ的だなーと思った。
というか、クロネコが知る50代以上のドイツ人男性に
ちょくちょくあるんだよコレ。
父親に対するコンプレックスと言うか
厳格な父親と分かり合えない反発心みたいなやつ。
年を取ったら理解はしあえないけど歩み寄る
タイプも居るけど、絶対許さない!みたいな
かたくななタイプをクロネコは少なくとも
5人は知ってる。
外国人のクロネコが5人も知ってるんだから
実際はもっと多いと思うんだわ。
なのでこういう演出があるとこの世代のドイツ人男性は
グッと来るんじゃないかな。
とはいえ。
アタイが見に行った映画館には年配の人はいなくて
平日だったからかもだけど。
あの日はドイツ人観客からの共感は
特になかったと思うわ。
若い世代のドイツ人は両輪と仲良しなんでね。
エンドロールのあとに最後KOMOREBIという
日本語の概念についてドイツ語説明をしてるシーンが
出てくるんだけど。
コレがまたドイツ人的だなーとアタイは思ったね。
まさにヴェンダースがこの映画を撮影する前あたりに
ドイツではこの単語がちょっと広がったんだわ。
どこまで一般的に広がったかは不明だけど
当時ドイツ人同僚にコモレビってすてきな日本語だね
って言われた覚えがあって。
その単語にあたるドイツ語は無いとのことだったんだ。
日本人てば詩的だなーってことで。笑
ヴェンダースもこの単語に感銘を受けたんだろうね。
森林浴とか自然に関する日本語でドイツ語にない概念は
時々ドイツ人を感動させてるみたいで。
たまにそういうのを目にする。
森の民ドイツ人を日本語で感動させると何か嬉しくなるわ。
あとね、この映画ってドイツも日本もメディアで使われてる
イメージ写真はこの写真なんだわ。↓
姪っ子と神社の境内で木々を見るシーンで。
とても良いシーンなんだけど。
何故か主要なドイツメディアでの映画紹介では
銭湯シーンが使われてて。↓
なんで?って思ったわ。
銭湯への憧れなのか、日本的だからなのか。
センスがよくわからん。
この映画にはいろいろ美しい東京のシーンが出てくるけど
クロネコが好きなシーンのひとつは隅田川が出てくるシーン。
日本に帰省時に墨田川沿いを散策すると
アタイもなんか気分が落ち着くんだ。
でもこれはもしかするとアタイの体がドイツ化してるのかもしれない。
ドイツってあまり海が無いけど川はたくさんあるんだ。
で、川沿いとか湖沿いを歩くのがみんな大好きで
アタイもよく歩くから。
三浦友和のことも豪華な使い方をしてて。
最後のシーンにチラッと出てくるけど
三浦友和も隅田川のシーンなんだよ。
オジサンたちの会話がめっちゃかわいらしい。
役所氏とふたりでタバコにむせるところも萌えだし。
ふたりで影踏みするところもめっちゃ萌える。
こんなすごい俳優をこんな使い方してー
っていうのがまた良い。
それもこれもヴィム・ヴェンダースだから実現してるのが
わかって、嬉しくなるんだわ。
出演者が語ってたけど撮影現場が平和で
暖かい感じだったとかで。
邦画の撮影現場だとヒエラルキーと言うか上下関係が
がっちりあるけど、ヴェンダースの現場には
それが一切無く監督も歩み寄ってくれてものすごく
みんなが心を開いて自由に出来て素晴らしかったって
言ってて。
芸術を作り上げる現場ってそういう対等な感じが
大事なんだろうなと思ったし。
何よりも見てるほうがその平和な空気を感じ取れたのよね。
なのでこの映画って見てる間中ずっと幸せな気分で
いられるんだよ。
見終わったあともほわほわ心があったかくなって
その日は雪が降ってたけどクロネコは寒さを一切
感じないまま帰宅したくらい暖かかった。
しかもその幸福感が数日続いたので
この映画はすごく良いしお薦めしたい!って思う。
逆にめっちゃ日本的!!!ってクロネコが思った
ポイントがあって。
その際たるものがカギだよ。
役所氏が毎朝仕事に行く前にアパートから出て
缶コーヒーを買って車に乗るルーティンがあるんだけど。
一度たりとも鍵をかけないんだ。
ドアに鍵をかけないのよ。
めっちゃ気になる。
気になりすぎて映画館で
「カギ閉めてー!!!」って言いたかったくらい。
でも。
都内在住の友達に聞いたら下町のボロアパートは
鍵をしめないのは割りと普通だったよ
とのことで。
東京でもそうなのかー。
というか今もそうなのかな?
日本の田舎が施錠しないの走ってるけど
東京もしないの?
そんで。
役所氏はチャリに乗って移動もするんだけど。
さすがに駅前に停める時とかは施錠してて。
でも。
お店の目の前に停めた時は施錠しないんだわ。
もうね。
「施錠してー!!!」だったわ。
ベルリンって秒でチャリが盗まれる街でさ。
施錠しないのってありえないし
施錠もめっちゃ頑丈なやつじゃ無いと危ないし
日本のあのタイヤの間にあるようなヤワなのだと
担いで持っていかれるからみんなガードレールみたいな
ところにつなげる。
それくらいやらないとすぐパクられる。
目の前の店でも危ない。
そんなベルリンに住んでるクロネコは
ひいいいいいってなったね。
多分あの映画を見てたドイツ人もひいいいいって
思ってたはず。
あと日本的で良いなあってクロネコが思ったのは
特に朝のシーン。
道に落ちてる落ち葉を住民が掃き掃除してて
その音で平山が目を覚ますんだけど
あの音って心地良いし、公共の場も住民が
常に掃除をしているのがとても日本的だと思う。
けどあの映画の撮影をした季節がよくわからなくて。
というのも木々が青々と芽吹いてたからで。
あの感じだと5月なんだろうか?
でも落ち葉があるってことは9月かな?
夕日の感じも9月とか秋のように見えたしで。
季節がいまいち分からなかった。
誰か東京在住の人おしえてくださいませー。
トイレ清掃もそうだけどこの映画では掃除を
してるシーンがいっぱい出てくるんだ。
それを見てると清潔な日本、清潔な東京!
って言う外国人目線が描かれてる感じもした。
あの清潔な感じってドイツ人には特に
くるものがあるんじゃないかなと。
でもトイレ掃除とかはドイツ人は精魂こめて
やったりはしないし、それは移民の仕事!って意識だよ。
そんで汚く使う。
この映画って脚本のストーリーは大筋をたぶん
ヴェンダースが考えてて。
セリフとかは高崎氏が考えてるのかなと。
だからセリフがとっても自然で違和感が全く無い。
変なドイツ人感覚みたいなのもない。
ヴェンダースが小津映画ファンだからか
シンプルなセリフなのもすごく良い。
まあ作品性の高い邦画は大抵セリフ少な目だから
普通っちゃあ普通なんだけど。
洋画は無駄な会話が多い場合があるんでね。
特にドイツ映画は・・・笑
クロネコはベルリンの映画館で見たので
日本語オリジナル音声+ドイツ語字幕だったんだけど。
(ドイツ語吹き替えのタイムスケジュールもある)
主に日本語を聞いてたけど、たまに字幕も見たんだ。
でね。
日本語ってすごいなと思うシーンがあって。
三浦友和が役所氏に
「お店によく来てくれてるみたいで」って言うんだけど。
そのセリフひとつで、三浦友和と石川さゆりの
関係性がなんか想像できるわけなのよ。
自分の身内の店に来てくれる人に対しての言い方だなと。
それを聞く役所氏は失恋じゃないけど、ああってなるんだ。
で、そのセリフがドイツ語だと
Sie sind oft daだか、Sie besuchen da oftみたいな表現だったんだ。
(うろ覚えだけどこんな感じだった)
直訳すると「あなたはよくあそこに行っている」になる。
you visit there oftenみたいなね。
それだけだと身内感が出ないんだよね。
「あなたよくあそこに行ってるんですね」みたいな。
多分日本語のニュアンスって細かくはドイツ語に直せないのかなと
思ったんだ。英語もしかり。
もしかすると字幕だと文字制限あるからそうなったかもなので
吹き替え版を見たら違う言い方をしてる可能性はある。
けど、他のシーンでも日本語表現のニュアンスをカットして
ドイツ語で字幕になってたので、多分日本語のほうが細かい心情とか
状況を非直接的に表現できるのかもなーと思った。
そういうのをじっくりチェックしたいからできれば
家のPCで見たいなーとおもたね。
画面を戻したり、字幕をとめて確認したいわー。
映画館だと一瞬だから難しい。
ただ逆に女子高生ニコちゃんが出てきたときに
ニコちゃんが役所氏を「おじさん」呼びしてて。
おじさんって、オジサンなのか、伯父さんなのか、
パパ活か?とかいろいろ考えてしまい。
どのオジサンなのか分からなくて。
けどドイツ語字幕見たらOnkelって書いてたので
伯父さんかーって分かったという。
なんか女子高生がおじさんって言うとどっちの意味なのか
考えてしまう自分がイヤだわ。
すっかり思考が汚れてる。
ヴェンダースの映画の特色を語ってる映画評を
まだ見てないんだけど、誰かヴェンダースポイントで批評して欲しい。
何故ならクロネコはヴェンダース作品があんまわからないからで。
昔見た記憶で感じたのは。
白黒演出はヴェンダースっぽいなとか。
東京を上から撮るのもヴェンダースっぽいなと。
クロネコより年配の映画好きな人なら
パリ・テキサスとか
Milion Dollar Hotelとか見てそうなので
知識がありそうだなと思って。
クロネコはベルリン・天使の詩しか見てないんだ。
だからもっと全部見ないとヴェンダースを評価出来ない。
だれかー!笑
役所氏演じる平山が毎晩読書をしてそのあと
眠ると必ず夢を見るんだけど。
それはその日インパクトがあったり
であった人がモノクロで写真のように出てくるんだわ。
毎回そのシーンがはいってて。
夢を表現してるんだろうなと。
で、その夢のシーンの演出を手がけたのが
ドナータ・ヴェンダースさんで。
もうヴェンダースで分かると思うけど監督の奥さんだよ。
U2のボノが出てる映画Million Dollar Hotelでも
演出か何かで参加されてるとかで。
役者さんたちの演技力が確かなので
安心感がすごいのは上述したけど。
変な今どきの欧米の偏ったWOKEというか
ポリコレ臭が一切無いのがこの映画のいいところ。
だからそこも安心できる。
ゲイ同士の恋愛とか、差別に苦しむトランスの苦悩とか
移民が受ける苦悩みたいなマイノリティが主役!な
風潮がアタイは嫌いなんだわ。
プロパガンダだと思ってるし、そのテーマを扱うと
賞を取れる風潮もいまいましく思ってる。
だから映画を見るのがつらくなってるのもあるんだわ。
ヴェンダースの今作品の素晴らしいところは
普通の人を普通に描くことで見る人を幸せにするからで。
そういう平和で心が温かくなる希望を感じられる映画が
あることに感動したし、
それを描けるヴェンダースはやはり巨匠なんだなと思った。
正直言うとベルリン天使の詩しか見たこと無いので
他の作品も見てみようと思う。
もう思ったこと全部書いたから長いのなんの。
こんな長い映画評無いよね。
この映画は本当に良い芸術系というか作品性が高いので
心を充実させたい大人向けだと思う。
大人が見るといいんじゃないかな。
商業映画にうんざりな人も見ると満足できると思う。
クロネコの評価は星5つだよ。(星5つが最高)
☆☆☆☆☆